http://d.hatena.ne.jp/amegriff/20050929/1127951373
http://www.sankei.co.jp/databox/kyoiku/etc/050926etc.html
科学とは現実とのつじつま合わせ、合わないときには下敷きにした理論へ巻き戻る繰り返し。
今までの論を一つ一つ検証せず、一気にひっくり返し、そして探求をあきらめる「インテリジェントデザイン(ID)」論は科学的とは正直言い難い。
科学的ではないが、科学っぽく見える物を「エセ科学」等というが、IDは現状エセ科学といって差し支えないと思う。その要件を満たしているからだ。


IDは「世の中は偶然がすごくてどこかおかしい、多分何かがコントロールしている。何かがコントロールしているならば、それはきっと知的な何かに違いない!」という理論(神様が確率を決めている論、と言ってもいい)。進化論だけに限らない広い理論だ、ただ、ここでは議論の多い進化論に話に限る。


現在の進化論は「ダーウィン進化論とその仲間達」論が主流だ*1
進化をコントロールしているモノは、ダーウィン進化論では「環境(気温が高かったとか、酸素が多かったとか)」であると考えている。

IDでは、『その進化をコントロールする何かをコントロールする「知的な何か」がいる』と主張している(意外かもしれないが、直接作り替えた等というモノリスチックな主張は今の所余り無い様だ)。


違いはコントロールする「何か」を生み出すのが自然の「偶然」なのか、「知的な何か」という差だ。

そしてその「知的な何か」その物には具体的に触れていない。「偶然と言うには凄いから、知的な何かがいる、でも何なのか解りません、だってそんな凄いなにかを人間が理解出来るわけない」と言って〆ている、えっ?(;´Д`)なにそれ。


IDは、現時点で根拠の薄い*2論を、特に各論でつじつまが合わせ切れていない箇所だけに絞って強く争い、そこだけ説明する(ごまかす)事で、まるでその論理全体が正しい様に振りかざしている。それは科学からみれば冗談みたいだ。そしてこれはオカルトやエセ科学の典型的な例でもある。

具体的に言えば、カンブリア爆発や無機物から有機物が発生した事など、証明の難しい極地ばかりを「わからないんでしょ?偶然としたら凄すぎるし、きっと知的な何かがやったんだ。それならとても理解できるでしょ?!で、そうなると全部が知的な何かが仕組んだんだよ!きっと!」なんて説明なのであり、乱暴も良い所である。


で、ここが重要なのだが、IDは現在ダーウィン論とバッティングしない様に主張している。上記したが、偶然をコントロールするのが知的な何かであって、ダーウィンはあくまで下敷き、という事である。こうなると関係がややこしい、うさんくさくてダーウィン派は否定したいが、実際には直接否定しづらい所がここだ。
エセ科学は最後の最後まで敵をつくらないのだ、特に連中は宗教戦争を勝ち抜いてきたプロだからな、笑い
そして「反論がない=認められた」という主張をして利用に掛かるだろう(これも典型パターンだ)。


一歩引いて見れば「現在の論と矛盾しない」事と「現実と矛盾しない」かは異なる物だし、それでは現実ではなくて「現在の科学と、自分が主張したい何か」とつじつまを合わせている論だとわかるだろう。そう、これじゃ科学じゃない。
しかしながら、悲しいかな、シロウトをだますにはこれでも十分な証明になるだろう。

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ID論者の努力はいつしか実をむすび、面倒くさくて反論しない科学者を尻目に「IDは現代科学から認められている」と主張し出すだろう。エセ科学が科学をのっとりに掛かる。

この文では進化に限ったが、IDは天文学や物理学についても同様の主張をしており、そちらもいつの間にか乗っ取られるのだろう。そしてID論がすべての科学の上におおいかぶさり、科学=ID論、という論が立つのだろう(冗談ではなくて、それくらい広い範囲の主張をID論ではしている)

これは論を広範囲にして全体の反論をしづらくするテクでもある、そして一部が「事実誤認でも」認められれば、他の分野でも正しいと錯覚をさせやすい。
繰り返すが、科学ではないので証明する必要なんかないのだ、否定されなければエセ科学はそれでいいのだ。ダマすには十分なのだ。


そして、後になってからエセ科学を否定をしても「なぜ今まで否定しなかったのか」とか「矛盾しない理論を否定するのはなにか裏がある」などというおきまりのオカルティックな論議になってしまう、こうなるともはや根絶も難しい。

そもそも流行らない様にしなければならないのだ、ちょっと考えれば解るような事でも一度信じた後ではぬぐう事は難しい。現在でも占いは科学的だとか考える人が多い事を考えれば解るだろう。


さらに現在では理論とは全然関係のない有名人がでてきて「後援、応援、賛同」をもってハクを付けている。この事からもあくまで主張する対象は一般の人で、科学者からいくらバカにされたっていいのだ、無視されるなんてむしろ好都合だ。
これはまったくもって典型的なエセ科学、オカルトの手法である。

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ID論者が「知的な何か」をひきずりだして、その検証を色々とおこない、「定数」化する事は、いくら荒唐無稽だと思えてもそれは科学だ。
しかし、その検証が一切無いのに(形ばかりの物はあるかもしれないが、形而上だ)、色々な分野に都合の良い万能「変数」として「知的な何か」を引きずり出す事は科学ではない。
とりあえず信じさせてから検証作業はその後、いつかきっと多分やるよ、なんて詐欺だ。


繰り返すが少なくとも現在においてIDは科学には見えない、エセ科学だ。


「神様ってとっとと言ったらどうですか?」という人は、ID論者がしたい事を解っているのだ。
「IDって何ですか?知的な何かってなんですか?」とか聞く人はバカなのだ、ID論者は喜んで説明するだろう。


科学者は今の内に、どんなにくだらないとしても、きちんとした反論をして、そして知識人や文化人、マスコミ、勿論普通の人もきちんと科学がどんな物か理解して、論理的に判断しなければならない。そのエセ科学がどんなにロマンティックだとしても。


検証を最初からあきらめて「科学は万能ではない」とか言い出したら「やーいオカルト」と強く言わなきゃならない。


カール・セーガン博士が生きていればガツンと言ってくれたのに!

*1:ダーウィン進化論を下敷きにはしてあるものの、「ダーウィン進化論だけでは説明できない」という物が積み重なっている。全く生まれを異としながら説明している論もあるが、現状一番現実とつじつまがあっているとされるのはダーウィンの進化論(とその派生のグループ)だ

*2:「想像出来る」から一歩も出られない